臨床的意義
麻疹ウイルスはヒトの麻疹(はしか:measles)の原因ウイルスである. 麻疹ウイルスは患者の咳の飛沫, 鼻汁などを介して健康人の気道や鼻粘膜に感染する. ウイルスの潜伏期は約10日である. 麻疹に罹患すると微熱, 咳, 鼻炎, 結膜炎, 高熱の順で臨床症状が現れる(前駆期). この期間が数日続いたのち発疹が生じる(発疹期). 発疹期は約5日間続き, 回復へと向う(回復期). 特に前駆期の終わりに口腔粘膜にみられるコプリック斑は麻疹に特徴的である.
臨床上麻疹に類似する猩紅熱, 風疹, 突発性発疹などとの区別が困難な場合, また気管支炎, 肺炎, 中耳炎などの合併症, さらに麻疹ウイルスによる持続感染症としての麻疹後脳炎, 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などが疑われる場合には血清診断が必要である.
血清学的診断として麻疹の急性期と回復期の血清について種々の方法により麻疹抗体価を測定し, 両者の間で有意の値の上昇がみられれば, 麻疹罹患を確診する. また, 中枢神経系疾患の場合, EIA法IgG捕捉法による髄液中の局所抗体の証明が, また感染初期の血中抗体検査はEIA法IgMが有用であり, ワクチン接種後の抗体チェックには6-8週後にEIA法IgGが用いられる. 抗原の検出にはウイルス分離とPCR法を用いた遺伝子解析なども有用である.
異常値を示す病態・疾患
麻疹, 亜急性硬化性全脳炎(SSPE), 合併症として気道感染症, 中耳炎, 脳炎, 脳脊髄炎
関連検査項目
麻疹ウイルス抗体[HI]
麻疹ウイルス抗体 IgG[EIA]
麻疹ウイルス抗体[PA]
参考文献 (緑ブラウザからPubMedにはアクセスできません)
エスアールエル 検査要項
厚生省監修: 微生物検査必携ウイルス・クラミジア・リケッチア検査第3版第1分冊48~61 1987
杉下知子ほか. 麻疹,ムンプス,風疹患者における血清中の免疫グロブリンクラス別抗体測定の診断上の意義. 医学と薬学. 1992, vol. 28, no. 2, p.325-334.
