臨床的意義
抗リン脂質抗体症候群(APS: antiphospholipid syndrome) とは, 生体内に抗リン脂質抗体(aPL: antiphospholipid antibody)の存在が証明され, それに関連した動静脈血栓症や妊娠合併症を臨床症状とする患者群と定義される. APSは特に基礎疾患がなく発症する原発性抗リン脂質抗体症候群(PAPS: primary antiphospholipid syndrome)と, 膠原病などに合併する二次性抗リン脂質抗体症候群(SAPS: secondary antiphospholipid syndrome)とに分類され, SAPSの基礎疾患としては全身性エリテマトーデス(SLE: systemic lupus erythematosus)が最も多い. APSに関連するaPLには, 抗カルジオリピン抗体(aCL: anti-cardiolipin antibody), 抗β2GPI抗体(aβ2GPI: anti-β2-glycoprotein 1 antibody)およびループスアンチコアグラント(LA: lupus anticoagulant)がある.
APSの診断には, aPLの存在を証明することと, それに伴う臨床所見とが必要であるが, 保険収載となっているのはIgG-aCLのみであった. また, 血栓症状や妊娠合併症に強い関連を示すaβ2GPIについても保険収載がなく, 保険診療内で検査を実施できるのはaβ2GPIの代わりとしてβ2GPI依存性aCL(β2GPI-aCL)-IgGのみであり, APSの臨床症状に強く関連するがaβ2GPIとは測定結果が若干異なる.
診断用検査としては, 抗体自体を測定する免疫学的方法と, ループスアンチコアグラントを凝固時間の延長により検出する機能的方法とに大別される. 国際血栓止血学会(ISTH: International Society on Thrombosis and Haemostasis)により, 検査基準と臨床所見とを組み合わせたAPS診断基準(2018年改訂)が出され, その検査所見としては, 血漿中ループスアンチコアグラント, β2GPI依存性抗カルジオリピン抗体 IgG/IgM, 抗β2GPI抗体 IgG/IgMのいずれかが12週間以上離れて2回以上検出されることが条件となる.
本検査は主要なaPLをアイソタイプ別にパネル検査として抗カルジオリピン抗体IgG/IgMおよび抗β2GPI抗体IgG/IgMの4種を同時に測定するものとして2020年7月に保険適用となったもので, 国際血栓止血学会が定める分類基準に沿った検査が可能となり, これらを一連で測定することはAPSの診断に有用であると考えられる.
異常値を示す病態・疾患
関連検査項目
抗カルジオリピン抗体-IgG
抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体
参考文献 (緑ブラウザからPubMedにはアクセスできません)
渥美達也. 【ヘマトネフロロジー:血液・凝固疾患と腎障害】血小板, 凝固異常症と腎障害 抗リン脂質抗体症候群. 腎と透析. 2018, vol. 84, no. 4, p.572-578.
Miyakis, S. et al. International consensus statement on an update of the classification criteria for definite antiphospholipid syndrome (APS). Journal of thrombosis and haemostasis : JTH. 2006, vol. 4, no. 2, p.295-306.

Devreese, K.M. et al. Laboratory criteria for antiphospholipid syndrome: communication from the SSC of the ISTH. Journal of thrombosis and haemostasis : JTH. 2018, vol. 16, no. 4, p.809-813.

日本検査血液学会 編, スタンダード検査血液学 第3版, 2014
LSIメディエンス 検査要項