臨床的意義
ACTHは下垂体前葉で合成, 分泌される39個のアミノ酸からなるポリペプチドで, βリポトロピンと共通の前駆体から酵素分解されて産生される. ACTHの分泌調節は主に視床下部のCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)と標的臓器である副腎のグルココルチコイドによるフィードバックにより行われるが, 各種のアミン類やストレスもACTH分泌を促進する.
ACTHの生理作用は, 副腎皮質におけるステロイドホルモン産生を促すほか, 脂質分解作用やメラニン色素の生成作用などがある.
ACTHの分泌は覚醒時(早朝安静時)にピークを示し, PM6:00~AM2:00に低値(ピークの半分以下)となるので早朝安静時に採血することが望ましい. ACTHは不安, 緊張などで分泌が高まるほか, 下垂体腺腫によるクッシング病や副腎機能不全で上昇する. 臨床的にはコルチゾール値と対照して検査値をみることに意義があり, 各種の負荷試験も併用される.
各負荷試験における健常人の反応は以下のとおりである;
インスリン負荷試験(増加), CRHテスト(増加), リジン・バソプレシン負荷(増加), メトロピンテスト(増加), デキサメサゾン抑制試験(0. 5mg負荷で通常10pg/mL以下に抑制).
異所性ACTH産生腫瘍では腫瘍組織によりACTHが産生され, ACTHは高値を示す. 肺癌, 胸腺腫瘍, 膵癌などにみられる. また異所性CRH産生腫瘍でもACTHは高値となり, 肺癌, 膵癌, 腎癌, 甲状腺髄様癌などの疾患に認められる.
一方, ACTH低値は, 視床下部性および下垂体性の下垂体機能低下症, 副腎性クッシング症候群などでみられる.
異常値を示す病態・疾患
高値を示す病態
[コルチゾール高値]クッシング病, グルココルチコイド不応症, 異所性ACTH産生腫瘍, 異所性CRH産生腫瘍
[コルチゾール低値]アジソン病, 先天性副腎皮質過形成, ACTH不応症
低値を示す病態
極度に低値, 特に検出限界以下の場合
[コルチゾール高値]クッシング症候群
[コルチゾール低値]副腎性ACTH単独欠損症, シーハン症候群, ACTH非産生性の下垂体腫瘍
関連検査項目
コルチゾール
17-KS7分画(17-ケトステロイド7分画)[随時尿]
17-KS7分画(17-ケトステロイド7分画)[蓄尿]
参考文献
LSIメディエンス 検査要項