臨床的意義
抗Scl-70抗体はENA抗体の一つであり, 対応抗原は真核細胞の核内に存在するトポイソメラーゼⅠである. 本項目の名称は, この酵素の分子量が70kDaであることに由来する. Sclとは強皮症 (Scleroderma)の略語である.
抗Scl-70抗体は全身性進行性強皮症 (PSS)または強皮症の診断に用いられ, 疾患特異性が高い. しかし必ずしも病勢を反映せず, むしろ予後を示唆する指標となる. すなわち, 免疫拡散法でのPSSにおける陽性率は20~30%にとどまるが, 陽性例では内臓も含めた全身症状に及ぶ事が多い.
PSSは皮膚の硬化が全身に及ぶ汎発型と, 手指や顔面に限局されるCREST型に分類され汎発型での陽性率は約75%に達する.
CRESTとは
Calcinosis (皮下の石灰化)
Raynaud's phenomenon (レイノー現象)
Esophageal dysmotility (食道蠕動性の低下)
Sclerodactily (手指硬化)
Telangiectasia (毛細血管拡張)
の略である.
汎発型は急激な進行を示すことが多く, また内臓線維化病変がみられることも多い. これに対しCREST型は, PSSの約1~2割に認められ, 抗Scl-70抗体は必ずしも陽性にはならない. 本病型に特異的な抗セントロメア抗体を同時測定し, 判別が進められる.
陽性を示す病態・疾患
全身性進行性強皮症(PSS)
とくに汎発型で陽性率が高い
関連検査項目
抗核抗体(ANA)[CLEIA]
抗DNA抗体
抗dsDNA抗体-IgG
抗Sm抗体[CLEIA]
抗RNP抗体[ELISA]
抗SS-A抗体[CLEIA]
抗SS-B抗体[CLEIA]
抗セントロメア抗体[CLEIA]
リウマトイド因子(リウマトイド)
リウマトイド因子-IgG
参考文献
LSIメディエンス 検査要項